薔薇で弔う
薔薇にまつわる伝説・神話は数多くありますが、愛の象徴を語り継ぐ諸説が多い中、実は「弔いの花」としての薔薇の話も少なくないことをご存知でしょうか。
古代ローマ人にとってバラは愛と美、喜びの象徴とされていました。その時代、花嫁と花婿は愛の象徴である薔薇の花冠をつけましたが、同様に葬儀でもふんだんのバラの花を墓にまき、植えられたといいます。
後世にあっても、薔薇の花は本質的に人を弔う花とされ、死者の名誉に敬意を表すために飾られてきました。
若者の死には白い薔薇が長期間墓前に供えられましたし、棺架の上には薔薇の花びらがまかれ、また純潔を意味する白バラの花輪が墓に飾られることもありました。対し、赤バラは愛、生命、恋に破れた胸の血色の象徴とされ、イギリスでは婚約中の女性が亡くなると、胸に赤い薔薇を載せて埋葬されたという話もあります。
キリスト教において薔薇の花は「神の愛・赦し・殉教・勝利・慈悲」棘は「罪」の象徴。殉教者の墓に薔薇の花が掘られた場合は、薔薇は「復活」を象徴するのだそうです。
薔薇は忠実な恋人たちの墓から咲き出したという伝説もあり、これに類似した別の伝説もいくつかありますが、いずれも薔薇がはなつ芳香と輝く色が、古代より人々の悲嘆や沈鬱を和らげたことは間違いないでしょう。
現代、一般的には「お供えに薔薇の花はいけない」「棘のあるものはダメ」などと見聞きすることもあるかと思います。確かにしきたりを重んじる国民性としましても、風習の残る地域や、差し上げる方の世代へは十分配慮したうえで、ご用意してしかるべきでしょう。でも貴方なら。貴方ならどんな花を送られたいでしょうか。どんな気持ちでしょうか。そして、送る立場として、いちばん伝えたいものは何でしょうか。
どうか貴方のその気持ちを大切にしてくださいね。