6月
都会の夏の夜
そうこうしてるうちに6月もおわり。雨に降られたり、梅を仕度したり、遠雷にびくびく、いったりきたり、忙しなく過ぎたひとつきでした。一晩くらいは見直す時間にしようと思う今宵です。
なながつも直ぐそこ。中原中也の美しい詩に出会いました。
好い夏であることを願いつつあなたへ。
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月は空にメダルのように、
街角に建物はオルガンのように、
遊び疲れた男どち唱(うた)いながらに帰ってゆく。
――イカムネ・カラアがまがっている――その脣(くちびる)は胠(ひら)ききって
その心は何か悲しい。
頭が暗い土塊(つちくれ)になって、
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。
商用のことや祖先のことや
忘れているというではないが、
都会の夏の夜の更――
死んだ火薬と深くして
眼(め)に外燈(がいとう)の滲(し)みいれば
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。
『都会の夏の夜』中原中也
コチョウラン 花言葉「変わらぬ愛」