萩と日本人
古い和歌や文学作品、美術品に描かれた花を見知るだけでも、その時代や地域、文化伝統のなかで、いかにその植物が愛されてきたか、うかがい知れて楽しいものです。
萩は万葉の時代にはどの花よりも愛された秋草で鑑賞だけでなく、食用や薬用など実用的にも使われてきたといいます。
国字であるその字を見ても「くさかんむりに秋」ですから、それだけこの花が日本人にとって身近な植物で、ゆえに秋を象徴する花だったことがわかります。
美術品や調度品においても萩が描かれた名品は多いそう。花札にも「萩と猪」がありますね。子孫繁栄、縁起のいいモチーフです。
万葉集には142首もの萩をうたった歌があり、それらは暗喩たちこめる恋の歌が多いですが、対して、俳句では素直な自然鑑賞や、身近な暮らしぶりがうかがえます。
これは芭蕉が巡り合わせで宿をともにした遊女と自らを「萩と月」に喩えた、とも創作とも。
零れるほどに花をつけ、しなやかにしだれ咲き、冬にもなれば後腐れなく枯れてしまう萩の花。近頃ではあまり見かけなくなったけれど、萩のさかりは変わらず秋の風物詩です。
それにしても、藤は男の意志を思わすけれど、萩は女のしたたかを感じます。今年は終わってしまったかしら。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ハギ 花言葉「前向きな恋」