11月
初時雨
時雨月、とその名にみあった季節の雨が、やっと空から降りました。立冬を過ぎたその雨は、初時雨(はつしぐれ)といいます。近くの神社にある桜の木も、ひと晩の冷たい雨をぬぐうように、いよいよと葉を散らしはじめました。
盛夏の頃のみずみずしさは消えました。けれど雨が降るたびに、しみじみと冬に浸かっていく落葉の景も、他の季節には見られない、心の安らぎもたらす眺めです。
緑から黄へ橙色へ、赤から茶へと変化する、落葉の色に親しみを感じながら、迎える冬への期待は高まるばかり。
冬の空から降るものは授かりものといいますが、時雨もそれと思います。そして空の近くにあるもの、あれもご褒美のような気がします。
成ったまま落ちてこないのも、そこにいるのに飽きてか落ちてくるのも、はらはら舞うのも、眺めているうちに「どうぞ」の声が聞こえるような気がして、じっと耳を澄ましてみたりして。
この季節の空に近いものたちは、人が喜ぶことを本当によくわかっているなと思います。
心憎いとはこのことと、思い知った気分です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サザンカ 花言葉「ひたむきな愛」