移菊(うつろいぎく)
野菊は日本各地に咲きますが、園芸の菊は奈良時代に中国から伝来したといわれます。
その中国文化において菊はお酒や薬に用いられていたので、日本に伝来した当初も、鑑賞用ではありませんでした。
そのような背景もあり、当時の歌をあつめた『万葉集』には、菊を詠んだ歌は一首もなく、平安時代の『古今集』になると、先の歌もふくめた十二首がみられます。
これも古今集にある一首で「寒くなり色が変わっていく秋の菊を見ていると、まるで一年のうちに二度咲いて匂う花のように見えてくる」とうたっています。
この菊の色が変わっていく様子を「移菊(うつろいぎく)」といい、それは美しさの形容としてつかわれました。
この季節にみる花色は霜や雨にあたって凍てついて、荒れさびれた感の方が強い。にもかかわらず、
そんな自然のなかの微細な変化にさえ、もれなく見合った美称を授けるのだから、昔の人の感性は本当に豊かですばらしいですね。
年々あたらしい日本語、新語がうまれますが、それに慣れるをしながらも、忘れられ消えてしまいそうな日本語にもたまに触れると、あたらしい気づきがあっていいものです。
温故知新、今日もいちりんあなたにどうぞ。
ノギク 花言葉「忘れられない想い」