12月
月夜の晩 最後の満月
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「月夜の浜辺」中原中也
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちていた。それを拾って、役立てようと
僕は思ったわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂に入れた。月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちていた。それを拾って、役立てようと
僕は思ったわけでもないが
月に向ってそれは抛れず
浪に向ってそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。月夜の晩に、拾ったボタンは
指先に沁み、心に沁みた。月夜の晩に、拾ったボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
この詩に触れて、今年も、いまだに捨てられないものがあることを、思い出します。捨てられないなら役に立てようと思い、思って取っておいたことを忘れてしまい、思い出したものの役に立つと思えず、捨てようと思ったけれど抛れなかったもの。
すっきりとかたを付けたい心境なのに、そうも出来ない年の暮れ、月夜の晩。今夜は今年最後の満月です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
スイセン 花言葉「私のもとへ帰って」
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