藪柑子(やぶこうじ)
正月に飾る植物として欠かせないものに「赤い実」があります。色の少ない冬にパッと眼に飛び込んでくる鮮烈な色は、まるで紅葉の絢爛をうけついだかのようです。
それほどの華やぎはなく小さく目立ちはしないのですが、艶々した葉の間からつぶらな赤がのぞく美しい植物があります。藪柑子(やぶこうじ)です。
赤い実には、千両 万両をはじめ縁起の良い名前がついていることがありますが、この藪柑子も、そのひかえめな佇まいならではに「十両」と呼ばれます。本当にささやかですが、人を祝福するような福々とした輝きに充ちていていい。葉が落ちても実がなり続ける強かさもいい。縁起ものたる所以でしょう。
個人的には、藪柑子といえば真っ先に思い浮かぶのは落語の「寿限無(じゅげむ)」ですね。
子どもに付けた長い名前の中に「やぶら小路のぶら小路」とでてくるあれです。きっとあれも、植物の丈夫さや縁起のよさから名前の一部になったんでしょうね。
さて、そうこうしているうちに12月13日は正月事始(しょうがつことはじめ)。 今日この日から、お正月の準備を少しずつ始めるとされています。
昔は火に必要な木々を山に取りに行ったり、松をむかえて飾りの準備を始めたり、すすを払って家を清めたりと、正月のためにすることは、実に多くありました。今は文明の利器に助けられ、ずいぶんと楽になったものです。
クリスマスもこれからで、大掃除となるまでにはまだ少し日がありますが、すっきりと片付いた日には花を迎えたくなるのも人情。ぜひその日には、花といっしょに赤い実を。きっと福が集まります。今日もいちりんあなたにどうぞ。
藪柑子 花言葉「明日の幸福」