1月
あえる通信 2024春 短歌-1(310文字)
大伴家持の屋敷で催された宴会で詠まれた歌で、「大夫の伴(ますらおの皆さん)、今日は奧山の峰々に咲く椿のように、心ゆくまで楽しい一日を過ごしてくださいね」と詠っています。「つばらかに」とは「思い残すことなく」という意味があり、この一言だけでも、客をもてなす家持の気持ちが伝わってくる歌です。
万葉集に椿の歌は8首、長歌をいれると9首あります。「つらつら椿」という句を用いた歌も多いことからも、この時代の人は、一枝ひと花を切って愛でるのではなく、連なりあって咲く野生趣を眺めていたのがわかります。椿の魅力といえば、生命力ある濃緑の葉と紅をつけた口唇のような艶やかさ。そんな椿に魅了されるのは、万葉の人たちも同じだったようです。