かの子と桜
大正から昭和にかけて活躍した作家 岡本かの子。言わずと知れた芸術家 岡本太郎の母ですが、歌人としては、おんな夏目漱石と評されるほどの、天才歌人だったといいます。
かの子の人生は、残した小説や歌集からも伺い知れますが、作品に滲む彼女の生き方にふれるたび、憧れるような、近寄りたくないような、用心深い気持ちになるのは、女の嗅覚でしょうか。
彼女の作品に、百三十八首の桜を歌った歌集があります。作られた背景には、中央公論の「さくら百首」という企画があったとのことですが、その依頼された百首を、かの子は一週間で作ってしまったのだとか。
そうした歌人としての活躍とともに、欲望に抗うことなく恋愛に生きた彼女の私生活は、なかなかの奇妙に満ちたもので、ついには自身を神経衰弱にまで追い込むほど、波乱万丈の繰り返しでした。
「お母さんのそばに近づくものは、お母さんの情熱に焼きつくされずにはいなかった。」
世間にとっては奇妙でも、息子の太郎には「誇り」と言いわしめた、かの子の天真爛漫な生き方。世に知られるは、息子の存在の方が色濃いですが、実はこの母の存在あっての太郎なのです。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サクラ 花言葉「純潔」