霞(かすみ)

Posted on 2024/03/24

月日は百代の過客にして、
行きかう年もまた旅人なり。
舟の上に生涯をうかべ
馬の口とらえて老をむかふるものは、
日々旅にして 、旅を栖とす。
松尾芭蕉『奥の細道』より

松尾芭蕉の『奥の細道』の冒頭「月日は百代の過客」は、知られるように李白の『春夜桃李園に宴するの序』の引用です。

原典になった李白の詩は、「そもそも天地というのは、万物を迎えては送り出す旅籠のようなもの」「そして月日は、その旅籠を訪れては去っていく旅人のようなもの」「つまり人生は短いのだから、今夜を大いに楽しもうではないか」といっています。

ここだけ切り取ると、先日触れた歌劇『椿姫』の中でヴィオレッタが歌う、「この世の命は短くやがては消えてゆく、だから今日も楽しくすごしましょうよ」にも似て聞こえます。またそう寄せると、両者の人間性にも同じ気高さ、ロマンティズムを感じるのは、私だけかしら。

そんな李白ですから、霞に曇る空を見あげても「霞たなびく春景色は、私に文章を書く才能を授けてくださった」と明るい心地でいた様子。

一方の芭蕉はというと、「時はさすらい、旅もさすらい。春の霞たなびく空を見ていると、心を誘う神がとりつくようで心細い」と春愁ただよう心情です。

同じ春の霞でも、こんなにも心に届く景色が違うのかと、興味を深めましたが、日本色にある「霞色(かすみいろ)」を知ると、その繊細で幻想的な雰囲気が、旅のはじまりにいる芭蕉の気持ちに似合ってる、とも思います。

霞色は、ほんのりと紫がかった灰色。旅人の春愁に似合う和の色です。そう、ちょうどこんな薔薇の色。今日もいちりんあなたにどうぞ。

夫天地者萬物之逆旅
光陰者百代之過客
而浮生若夢
爲歡幾何
古人秉燭夜遊
良有以也
況陽春召我以煙景
大塊假我以文章
會桃李之芳園
序天倫之樂事
『春夜宴桃李園序』李白

(そもそも天地とは、万物を迎え入れる旅籠のようなもの、光陰は永遠の旅人のようなものだ。 しかし人生は夢にひとしく、楽しさもそれと同じで長くは続かない。昔の人は夜も蝋燭をともして遊んだというが、それにはこうした理由があったのだ。いわんや陽春の霞たなびく春景色は私を招き、大地の恵みは、私に文章の才を授けてくれた。さあこの香しい園を春を、大いに楽しもうではないか。)

バラ 紫 花言葉「尊敬」

かすみか雲か

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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