一初(いちはつ)菖蒲(あやめ)杜若(かきつばた)
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そろそろこの花たちの声が、聞こえてくる陽気になりました。まずアヤメ科のなかでは、一番初めに咲くことから一初(イチハツ)ともよばれる鳶尾草(いちはつそう)。中国原産の植物で、昨日紹介しました、シャガの仲間のひとつとされています。
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昔は、この花が台風や災害を防ぐとの俗信があり、農家の茅葺き屋根の上に、この花を植える習慣があったといいます。実は私も、いちどだけ菖蒲が供えられた茅葺き屋根をみたことがあり、その時には意味が解らなかったものの、後にその古い慣習を知り、以降忘れられない光景になりました。イチハツの英名は、まさに「Roof iris(屋根のあやめ)」というそうです。
さて、このイチハツにもよく似た花に、花菖蒲(ハナショウブ)と杜若(カキツバタ)があります。
先にお伝えしますと、花菖蒲は「葉がショウブの葉に似ている」のでこの名がつけられており、つまり「菖蒲湯」の「ショウブ」とは別植物です。
その花菖蒲、「いずれが菖蒲(あやめ)か」と言われるように、一般的に「アヤメ」といえばこの「花菖蒲」のことをいっています。大陸から渡来したのち、品種改良が盛んにおこなわれたそうで、今やその数5000種にものぼるとも。それだけ種類も豊富にあれば、それは人目に触れる機会も多いことも想像に難くなく、この花が「アヤメ」と冠するの納得です。
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対する「杜若(かきつばた)」は、日本原産の植物で、花菖蒲に比べ品種は少なく、佇まいも控えめ。雄々しく群生する花菖蒲に対して、杜若はしっとりと女性的です。紫紺の燕(つばめ)がひるがえる様に見えることから「燕子花」ともいわれます。
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このように、知ればなるほど、けれどよくよく見ねば、どれも同じに映るアヤメ類の花たち。耳馴染みのある「いずれアヤメかカキツバタ」が「いずれも見分けがつきにくい」という意味になるのも頷けます。
しかしこの慣用句にふれるたび、そんな難しいことは考えず、まあ楽しみましょうよ、という気持ちになるのも正直なところ。ここまで話をしておいてなんですが。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
イチハツ 花言葉「嬉しい知らせ」
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