4月
虞美人草(ぐびじんそう)
歌から知る花の名前もあれば、文学から知る花の名前もあります。虞美人草(ぐびじんそう)もその一つです。
夏目漱石の同名小説『虞美人草』、こんな印象に残る表題ですが、実はあまり意味も考えずにつけたとか。連載前の予告文にも「花の名を拝借して巻頭に冠らす事にした。(中略)余の小説がこの花と同じ趣をそなうるかは、作り上げて見なければ余といえども判じがたい」と記していたそうです。
たしかに、作品の中にて虞美人草は、長編の最後になって、屏風の絵として出るのみ。ただこの作品には、虞美人草に限らず、薔薇や椿やシテ辛夷、浅葱桜、二人静などの、さまざまな花が登場するんですね。そうした数々の花もまた、この作品の景色に深い印象を残していたなと記憶しています。
漱石がはじめて手掛けたという長編ゆえ、後半になるとちょっと疲弊がのぞくような気もしますが、花好きだった漱石の一端に触れることが出来るという視点においては、とっても楽しめる作品です。よかったら。今日もいちりんあなたにどうぞ。
グビジンソウ 花言葉「休息」