移る季節
先日のこと、信号を渡って右に折れると、その角に咲いている真っ白な花塊が目に飛び込んできました。
ふだん通っている身近な町の景色であるのに、こんな花木あったかしらと覗き込むと、花のつき方はコデマリのよう、でも違う。花の形は梅のよう、その葉には覚えがあります。なんだろう。
と、あとで調べてわかった山査子(ピラカンサ)の花。そういえば確かに、ここにあったあったと、秋の盛りを思い出しました。
ピラカンサは山査子(サンザシ)、常磐山査子(トキワサンザシ)などとも呼ばれます。秋も深まる頃、紅葉に負けんとばかり、燃え立つほどの赤い実をつけますが、それが初夏には、まるで雪化粧したかのような、清楚な白花を咲かせることに、ちっとも気づいていませんでした。
立夏をむかえ、新樹がきらめく美しい五月。初夏の日差しをいっそう眩しく感じさせる白い花。風にさざめき立つ花を見ていると、不意に「ようこそ」と声をかけられたような、歓迎されたような気がして、どきんとします。そして笑われたような気持ちにも。悪くはない、嬉しいくらいです。
四季がいちどきに訪れた交差点も過ぎ、移る季節になりました。花から風へ、ようこそ、夏へ。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ピラカンサ 花言葉「愛嬌」
Text
フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/