みょうが
日本には、それぞれの季節において、旬を表す「香り」というのががあります。夏でいえば、香味野菜もそのうちです。例えば紫蘇、生姜、山葵、そして、茗荷(みょうが)。
子どもの頃は苦手としていた香味野菜も、今となってはご馳走です。特にこの暑い夏、ひとときの命を全て引き受けたかのように香り立つ野菜を、たっぷり頂ける贅沢といったら、この上ありません。
茗荷といえばこんな話があります。むかしむかし、お釈迦様のもとに、自分の名前さえも忘れてしまうお弟子が一人いて、そのため釈迦は弟子の名前を書いた旗を、その背中に背負わせました。
ところが弟子は、旗を背負ったことさえも忘れてしまい、とうとう死ぬまで名前を覚えることができなかったとか。そんな弟子の墓から見慣れない草が生えているのを見つけたお釈迦様は、「名を荷う」草と名付けます。それがこの「茗荷」とのことです。
茗荷はショウガの仲間とされますが、学名に「miyoga」とあるように、食用としてきたのは日本だけであったとされています。
「茗荷を食べすぎると物忘れがすすむ」とは、どこかで聞いた話ですが、先のお釈迦様の逸話に由来しているのかもしれませんね。落語にも「茗荷宿」というのがあり、そのオチも、期待通りの可笑しさです。
さて、茗荷にも花は咲き、それを気にしたことがなかったですが、みればなんと繊細な花でしょう。薄暗い湿った土のうえに、蘭のような花がぽつぽつと咲いているのを、実は写真でしか見たことがなく、そんな素朴な景色を想像するたびに、土の匂いを懐かしむたびに、田舎へのあこがれは、大きく育つばかりです。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
ミョウガ 花言葉「忍耐」
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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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