末摘花(べにばな)

Posted on 2024/07/26

外のみに見つつ恋ひなむ紅の 末摘む花の色に出でずとも
(遠くから見ているだけの恋にしようと思う 末摘花のように頬を染めたりなどせずに)
『万葉集』(巻10-1993)読人不知

万葉集の中に「紅(くれない)」を詠んだ歌は多くありますが、そのほとんどは赤く染まった「紅色」のことを詠っていて、植物としての「紅花」を詠んだ歌は、たった二首しかなく、そのひとつがこの歌です。

末摘花(すえつむはな)とは「紅花」のこと。枝の先端(末)についた花を摘みとり、紅の染料にしたことからその名があります。

昔から「頬を染める」といえば「紅色に」であり、その様子は紅頬(こうきょう)という言葉があらわすように、くれない色を帯びた美しい顔のことを表しています。

ひるがえって、源氏物語の中の「末摘花」は、美男美女ぞろいの源氏物語の中では異色の不美人。その「赤い鼻」を「紅い花」にかけて光源氏に付けられた、あだ名として登場します。

あんまりな扱いにも見えますが、しかし彼女には、光源氏の心をも動かす純真さがありました。

そしてその古風な一途さは、実は先の万葉歌「外のみに見つつ恋ひなむ紅の 末摘む花の色に出でずとも」からのインスピレーションだったという一説です。

「あの人を見ているだけでいいのです。私の恋は実らなくとも」そんな奥ゆかしさを、光源氏を慕う末摘花に重ねてみると、彼女に対する紫式部の思い入れに、ちょっと寄れた気がしませんか。

今日もいちりんあなたにどうぞ。

ベニバナ 花言葉「包容力」

くれないの花は朽ちても色褪せず

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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