山のあなたの空遠く
西欧の象徴詩の翻訳で知られる上田敏の訳詩のなかでも、とりわけ好きなカール・ブッセの「山のあなた」。この詩に触れるたびに、幸せとは何だろうと、ひととき進みをとめたい気持ちになります。
以前にもご紹介したことがありますが、万葉集の研究者として知られる中西進氏の著書の中に「さいわい」という言葉にふれた一節があります。
この節によると、「さいわい」の古語は「さきわい」で、この「さき」の語源は花が咲くの「さく」とのこと。更にこの言葉をひも解いていくと、古代の日本人は、花が咲き満ちる様子を目に浮かべて、そのときの心情を「さいわい」と表わし、それこそが、日本人の幸福観の証、だったという話です。
元来、私たち日本人にとっての「幸福」とは「心の中に、いっぱいの花が咲きあふれているように感じること」だったとは、なんて嬉しいエピソード。
先のカール・ブッセの詩は、「山の向こうの、ずっと遠い空のかなたまで行けば、幸福があると、誰かがいっていた」という詩。
こんな暑い夏だけれど、山の向こうの空の下では、美しい花たちが咲き満ちているのかもしれない。そんな景色を想像するだけで、しっとりと、涼がおりてくるようなここちです。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
レンゲショウマ 花言葉「伝統美」
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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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