左巻の朝顔
朝顔は、いけばなの出生と共に選ばれてきた花。いとも涼し気で清涼感ある佇まいは、朝に迎えるお客にもふさわしく、茶花として用いられることは、利休の逸話でも知られるところです。
あっさりとした風情ではありますが、花の命は短い一日花。それ故、その美しさを一瞬のうちに見せるには、扱う作法にも決まりが多く、古くから伝花(いけばなにおいて、それぞれの流派によって定められた規則)としても重く位置付けられています。
一般的には、日常の花として賞美されますが、一方、祝い花としては相応しくない花とされるのは、その蔓の左巻きに由来します。
ここに記された「左まえ」とは、蔓の巻き方のこと。そう、朝顔の蔓は「左巻き」、つまり反時計回りです。
少し話がそれますが、日本には「左上位」というしきたりが根付いており、身近な例でいうと、ふすまや障子のはめ方、また和服の着方である「右前」がそれにあたります。
お着物は、左襟が右襟の上(左上位)になります。つまり「右前」とは、着衣する自分から見て「右を先(前)」にあわせ、「左を上(位)」にする着方です。
このような上位思想は、左の東から昇って右の西に沈む日を尊ぶことに由来するとする説もあります。 日出ずる国ならではの思想ともいえそうですね。
さてそんなことから、左巻きの蔓を持つ朝顔は、格別の祝賀席で飾られることはありませんでしたが、庶民の暮らしにおいては縁の深い、夏に欠かせぬ風物詩。それは今日にも受け継がれているとおりです。
いま花は、名残りの頃になりますが、季語でくくれば秋の花。難しいことは忘れて、もうしばらくの晩夏の涼味、味わいたいと思います。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
アサガオ 花言葉「明日もさわやかに」
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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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