紫のゆかり
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紫の一本ゆえに武蔵野の 草はみながらあはれとぞ見る
詠人知らず
紫を詠った歌、といえば。で知られる「古今和歌集」にある歌です。
(人里はなれた地(武蔵国)において、紫の草一本が咲いているのを見ると、そこに生えるすべての草木が愛おしく思える)
といったところでしょうか。これを本歌にした歌が『源氏物語』の中にも見られます。
ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の 露分けわぶる草のゆかりを
光源氏
(まだ共寝をしたわけでは無いけれど、可愛くてたまらない。武蔵野の露を分け入っても、なかなか逢えない紫草(藤壺)にゆかりある人なだけに)
これは光源氏が慕った藤壺の姪、紫の上のことを詠んだもの。源氏にとって「永遠の女性」である藤壺と縁があること(紫のゆかり)を歌っています。
紫色は、階級制度のあった古代から、階級が最も高い者が身につける色でした。それが平安時代になると、先の歌をはじまりに「愛しい人に縁ある色」として扱われるようになり、さらに『源氏物語』の登場で、そのイメージは昇華します。
以降、女性に最も愛される色になりましたが、一方で、男性が詠む歌においては、ため息の色にも映るほど、くるしい恋歌が連なります。
紫の我が下紐の色に出でず 恋ひかも痩せむ逢ふよしをなみ
詠人知らず
(紫に染めた下紐のように決して表には出しませんが、恋する苦しさに痩せるばかりです。お逢いする機会もないままに)
恋しくは下にを恩へ紫の 根ずりの衣色に出づなゆめ
詠人知らず
(恋しい時は密かに思いなさい。紫の根ですった衣のように、決して心を表に出してはいけません)
「あなたに縁のあるものは、何でも愛おしい」「恋しくて苦しい」「決して人には言えないけれど」
こんな時、なんと声をかければいいでしょうね。余計なことも言えないですし。
とりあえず、がんばれ。かな。笑
今日もいちりんあなたにどうぞ。
ムラサキシキブ 花言葉「愛され上手」
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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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