「楽しみなべ」と花

Posted on 2024/11/24

「なべ料理」のことを、東京では「寄せなべ」というが、上方では「楽しみなべ」ともいっている。なぜ「楽しみなべ」というかといえば、たいの頭があったり、蒲鉾があったり、鴨があったり、いろいろな材料がちらちら目について、大皿に盛られたありさまが、はなやかで、あれを食べよう、これを食べようと思いめぐらして楽しみだからである。
「楽しみなべ」という名称は、実によくあてはまっている。しかし、「寄せなべ」というのは、なんだか簡単すぎて感じのよい名前ではないと思う。「なべ料理」は先にもいった通り、材料がいろいろあるし、それを盛る盛り方にもなかなか工夫がいるのである。この点を注意しないで、ぞんざいに扱うと、いかにも屑物の寄せ集めみたいになってしまう。 
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北大路魯山人『鍋料理の話』より

なべ料理をこよなく愛したという魯山人。 手間をかけすぎず素材の新鮮さを生かすことで、本来の美味しさ最大限さを引き出す料理、そんななべ料理は、魯山人の求める「美の究極」に通じたのかもしれませんね。

あれを食べよう、これを食べようと思いめぐらすのは、あれも生けたい、これも添えたい、なんて花を選ぶ気持ちに似ています。
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「私は、鍋料理の材料ひとつにしても生け花と寸分違わないと思っている。天然の材料を人間の味覚に満足を与えるように活かし、その上目も喜ばせ楽しませる美しさを発揮させるべきだ。」
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そうですね、花も一緒と思います。植物も、材料をいろいろと寄せ集めたところで、工夫がなければただの投げ込みになってしまいます。

「投げ入れ」という花の作法がありますが、入れるであっても、植物をよく見、花と眼が合い、また声が聴こえてこないと、器にも良いように入らず留まりません。ひるがえって眼が合い声が聴こえると、いっそう花が楽しくなるのです。

それにしても「楽しみなべ」とは初めて聞きました。でも今は、花を生けるより、あったかなお鍋を頂きたい。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ニラ 花言葉「多幸」

小さな星がいっぱい

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主 鈴木咲子
都内生花店に8年在籍ののち渡独。2000年に南ドイツ、アルザス地区の生花店での勤務を経て帰国後、2002年 通販サイトHanaimo開業。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格
https://www.hanaimo.com/