心の行儀

Posted on 2024/11/05

いい映画を観ると、知らないうちに姿勢を正してしまうし、他人に対する理解や礼儀が生まれてくる。人間として最も大切なマナーが自然に身に付くのね。
淀川長治

いま日本には、礼儀やマナーに関する書籍や配信は数多くあり、その切り口も一般教養、茶道、武道、プロトコールなど様々あり、知るたびに関心を深めております。

とかく日常において、誰を手本にするかは、その人自身の生き方にまで影響を与えることがあります。ですからその選択は、慎重とまで言わずとも振り回されることのないよう、身の丈であること、自分らしく在ることは、大切にしたい価値観です。

私などは、昭和初期の日本文学を好んできたこと、下町の文化や人間模様を描いた作品に親しんできたので、登場する人々の考え方や生き様には、いまだに影響を受けていますし、いうならば「美意識の教科書」にしてるといっても、過言ではありません。つまり私の場合、心の礼儀の多くは文学から学びました。

かつて、昭和の時代に活躍されていた随筆家に、沢村貞子さんがいました。浅草生まれ浅草育ちの沢村さんの作品は、慎ましくも豊かな生活をはじめ、夫婦二人暮らしのこんだて帖、浅草育ちの思い出話などが主ですが、

そうした彼女の生き方と芯ある筆致には、いまなお背筋が伸びる思いがしますし、ときおり萎える心には、拠りどころのような存在でもあります。

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とくに心を動かされるのは、作品の中にたびたび登場する、昔の浅草の大人たち。そこには子に対して親ばかりか、近所の大人までもが「みっともない」「恥を知れ」「嘘をつくな」といった厳しい言葉を放つ様子が垣間見れます。

一方いま現代は、親子の間でさえ、そんなするどい言葉を放つことは少ないでしょう。しかし昔の大人の言葉には、ひとつひとつが厳しくとも「心の行儀」がありました。「行儀」とは、礼儀の面からみた「立ち居振る舞い」のことです。

いうならば、昔の大人は幼少期から他人を手本にし、見聞きした訓えを心得にして成長したからでもありましょう。

庶民であること、忙しく働くこと、お金がないこと、着飾る余裕がないことを、恥とは思わず割り切って生きる。人と比べること、出し抜くこと、ごまかすこと、裏切ること、そうした見栄っ張りほど「みっともない」ことと知る。

古い思考かもしれませんけれど、私はそうした行儀を大事にしたく思います。またそうした手本に触れるたび、大人の心にこそ姿勢がなければ、子どもの躾にしろ社員の教育にしろ、相手に届くものはないことを、確信しているこの頃です。今日もいちりんあなたにどうぞ。

カリガネソウ 花言葉「誠実」

行儀作法が人をつくる

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。
「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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