11月
欅(けやき)
今も目を空へ空へと冬欅
加藤楸邨
十一月は木枯らし、時雨、小春日和を繰り返しながら、冬へ冬へと寄っていく月。小春日和と聞くたびに、今が初冬であることに気づかされ、まもなく一年も終わりの時期になるのだなと感じ入ります。
冬に向かうにつれ、自然界は色を失くしてゆきますが、日本には破れ蓮、冬欅、枯れ尾花など、末枯れる草木にまでも言葉を与えてきた、言語生活豊かな先人がいました。「日本人は木の葉も花とみる」とはまさしくで、これほど葉の美しさを愛でてきた人種はいないのではと思いますし、嬉しくなります。
いまなら欅。鮮やかな新緑もよかったですが、すっかり葉を落とした姿さえ、まるで幻の中で出会った一本の様に映る木です。
その原始のままに立つかのような姿を見上げていると、なんとも謎めいた思いがこみ上げてき、かと思えば、渦巻くように上へ上へと昇って消えてゆくから不思議です。
いったい何を気にして項垂れてたのかさえ思いだせないくらい、解けなかった気持ちが無しになる。欅はそんな木ですね。裸木になるまえの紅葉も美しい季節。今も目を空へ空へ。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ケヤキ 花言葉「長寿」
Text
フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主 鈴木咲子
都内生花店に8年在籍ののち渡独。2000年に南ドイツ、アルザス地区の生花店での勤務を経て帰国後、2002年 通販サイトHanaimo開業。
一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格
https://www.hanaimo.com/