11月
赤い実に寄す
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名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人にしられで 来るよしもがな」
三条右大臣
百人一首25番の歌。恋しい人に逢えると名のある「逢坂山」、一緒にひと夜を共(さ寝)するという名の「小寝葛(さねかずら)」。
その名の通りであれば、逢坂山の「さねかずら」をたぐり寄せるように、誰にも知られず、あなたを連れ出すすべを、知りたいものです。
そんなふうに詠っています。つる草を手でたぐり寄せるように、人目を忍んでも、恋する人に会いたい。そんな願いを詠んだ歌。
「さねかずら」とは、実(さね)が美しい、つる草(かずら)という意味をもつ秋の植物。秋が深まると、まるで金平糖のような赤い実が、緑の葉隠れから、ひょっこり顔をのぞかせます。美男葛(ビナンカズラ)ともいいます。枝の皮の粘液を、頭髪を整えるために使ったことが名の由来とのことです。
サネカズラばかりでなく、向寒の頃の赤い実の輝きは、庭木の常緑とともに、生きる気力に満ちてていいですね。どれを見ても、福福としていて目に染みて、心に沁みて、まぶしくて。今日もいちりんあなたにどうぞ。
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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。
「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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