11月
中原中也◎ナデシコ 花言葉「純愛」
秋の夜は、はるかの彼方に、小石ばかりの、河原があつて、それに陽は、さらさらとさらさらと射してゐるのでありました。陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、非常な個体の粉末のやうで、さればこそ、さらさらとかすかな音を立ててもゐるのでした。さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、淡い、それでゐてくつきりとした影を落としてゐるのでした。やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、今迄流れてもゐなかつた川床に、水はさらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました
『一つのメルヘン』-中原中也
こんなねかなしくて、さみしくて、うつくしい。じゃなくて、うつくしいけど、かなしくて、さみしくて。を、そんなことを、愛おしくおもうこの夜です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
ナデシコ 花言葉「純愛」