百日紅 乙女の一身 またたく間に 中村草田男
朝からつめたい雨、初時雨かしら、なんて思って外に出たらちゃんと降ってました。秋の雨は冷たくて、肌にあたる度に冬が寄るのを感じます。
また朝寒夜寒が続くようになると、やっとはじまった秋が深まるよりも先に減っていくような気がして、それも雨のせいじゃないかと思う、どうかしら。
花は名残りの百日紅。
「百日紅」と書いて「さるすべり」。「ひゃくじつこう」とも呼びます。その名の通り、7月の初めから晩夏まで、百日にもわたって咲き続けると言われるほど、花期がながい夏を代表する花です。
百日紅には、中国から伝わる悲恋の物語があります。
昔、朝鮮半島にあった漁村では、生娘を竜神に生贄にして、夏の水難防止を願うという儀式がありました。旅の途中にいた一人の王子が、この漁村でその儀式に遭遇、人身御供にされかけた娘を救います。そして二人は激しい恋に落ちます。
しかし旅の途中にいた王子は、自分に課された使命を終えるまではと、娘に百日後の再会を約束して旅発ちます。ところが約束の日を前にして、あろうことか王子との再会を待つことなく、娘は亡くなってしまうのでした。
与えられた使命と、一心に守りたいもの。王子が自身の選択を悔やみ、娘の墓前で嘆き悲しんでいると、やがて娘のお墓から、一本の木が生え、紅色と白色の可憐な花を咲かせました。
その花が、百日もの間、美しく咲き続けたことから、この花を見た村人たちは、きっとこの花は百日もの間恋人を待ち続けた、あの娘の生まれ変わりに違いないといい、この花に「百日紅」と名づけたということです。
男にとって挿話な恋愛も、女には生涯。夏の名残のこの花も、切ない恋の化身かな。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サルスベリ 花言葉「あなたを信じる」