2月春の夜Posted on 2024/02/23 春の夜 燻銀(いぶしぎん)なる窓枠の中になごやかに一枝(ひとえだ)の花、桃色の花。月光うけて失神し庭の土面(つちも)は附黒子(つけぼくろ)。ああこともなしこともなし樹々(きぎ)よはにかみ立ちまわれ。このすずろなる物の音(ね)に希望はあらず、さてはまた、懺悔(ざんげ)もあらず。山虔(やまつつま)しき木工(こだくみ)のみ、夢の裡(うち)なる隊商(たいしょう)のその足竝(あしなみ)もほのみゆれ。窓の中にはさわやかの、おぼろかの砂の色せる絹衣(きぬごろも)。かびろき胸のピアノ鳴り祖先はあらず、親も消(け)ぬ。埋(うず)みし犬の何処(いずく)にか、蕃紅花色(さふらんいろ)に湧(わ)きいずる春の夜や。 中原中也『山羊の歌』より いぶし銀のような色の窓枠の中に、一本の桃色の花が見えました。あれは桜でしょうか、それとも、桃の花でしょうか。 私は、桃と思いました。それは桜にも似た一重の。今日もいちりんあなたにどうぞ。 ハナモモ 花言葉「私はあなたの虜」 あなたの虜です 古い記事花の歌新しい記事朴の花