花筏(はないかだ)
花筏蕾みぬ隈なき葉色の面に
中村草田男
「花筏(はないかだ)」というと、一般的には散った桜の花びらが、水面に浮かんだ様子をいいますが、この「花筏」という名がそのまままついた、植物があるのをご存じですか。ひょっとすると、山菜が好きな方や、山が身近な方、お茶をなさる方でしたら、お詳しいかもしれませんね。
花筏は、森の中など湿気の多い肥沃な土地に育つ植物で、4~6月ごろになると、葉の中央に淡緑色をした小さな小花を咲かせます。先にも触れましたように、若菜は山菜、花は茶花にも使われる植物です。
その花を「筏に乗った」様子にたとえ、この名がついたとされますが、すこし調べてみると、別称に「嫁の涙」ともありました。
花筏は、秋になると葉の上に咲く花が、実を熟して黒くなります。その黒い粒を「嫁いだ先で、嫁が人に隠れて流した涙」にみたて、その涙が葉に落ちたのがこの花だ、というのです。
昔の結婚習慣がどんなものであったのか、咄嗟には思い描けないのですが、いったいどれだけ辛くて悲しいと、黒い涙が落ちるのか。そんなことを思っては、呑気に生きてきたなと、自分に思うきょうびです。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
ハナイカダ 花言葉「嫁の涙」
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2002年創業 フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。
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