紫蘇の香り
紫蘇しぼりしぼりて母の恋ひしかり
橋本多佳子
春に芽、夏に葉、秋に花や実が収穫される日本のハーブといえば。
そう、紫蘇です。
かつてドイツで知り合った現地在住の日本人が、ドイツに移住して以降、さまざまな植物を見つけては庭に植えてきたけれど、紫蘇だけは異国のどこにもなくて、こっそり持ってきたんだと、古びた鉢を見せながら、内緒話を聞かしてくれたことがありました。紫蘇だけはどうしても懐かしく、そして忘れられない香りだと。
記憶に染みつく、紫蘇の香り。
かくゆう私も、幼少の頃の思い出に、祖母がつくった赤紫蘇のシロップがあります。また、天日で乾かし手もみで崩してつくった、お手製のゆかりも。
うっかり溢してつけたシミ、指先にのこる香り。夏には欠かせぬ、重宝ないただきものだったことを、いまなお記憶しています。
薬効、殺菌作用がある紫蘇は、その字の通り「紫色した蘇る草」という意味ある名前だそうですね。青しそ赤しそ、ありますが、これも茗荷と同じく、夏の食卓には欠かせない薬味、皆さんはどのように使われるのかしら。
香りある自然の恵みに出会うたび、いま何を欲しているのか、必要としているのか、自らに問う時間を持つことができる、そんな気がします。
年々と、けだるさばかりが際立つ夏ですが、太陽と土のにおいを纏った香りは、日ごと季節を運んでくれる。ひとつでも、ひとときでも身体をいたわることを欠かさずに、今夏も元気に過ごしてまいりましょう。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
シソ 花言葉「力が蘇る」
Text
フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/