9月 吾もまた紅 一つ一つはもう憶い出せないが、私は妻とあの土地で暮した間、どれほどかずかずの植物に親しみ、しみじみそれを眺めたことか。妻が死んだ翌日、仏壇に供える花を求めて、そ... 2024/09/08
9月 くずの裏風 葛の葉の面見せけり今朝の霜松尾芭蕉秋の七草のひとつでもある葛の花。葛の葉裏は白っぽく、それがひらりとひるがえすと「まるで風が銀色にかがやくように見える」などと、... 2024/09/06
9月 秋明菊の頃 鞍馬の奥、貴船神社の境内は、うっそうとした樹林にかこまれており、高い崖によりそって、薄紫の貴船菊が、和泉式部の魂のような姿をして咲き乱れている。その風情が忘れら... 2024/09/05
9月 あとみよそわか あとみよそわか。「あとみよ」は「後を見よ」 「そわか」は「蘇婆訶」。「蘇婆訶」とは仏教の言葉で「功徳」を意味する言葉、人や世の中のためになる「善い行い」のことを... 2024/09/03
9月 新秋の記 新秋の記木下夕爾台所の片隅から吹いてくるあの風ももう秋だ白い皿の新豆腐のようにおどろきやすいこころよ裏の林にきてしばらく夕焼をながめている川瀬の音秋風の音子ども... 2024/09/02
8月 八月みそか 秋かぜにふさはしき名をまゐらせむそぞろ心の乱れ髪の君 与謝野鉄幹こちらはひとまず雨は上がり、遠くみやれば重たげな雲がたちこめており、夏とも秋ともいい得ぬ、ゆきあ... 2024/08/31
8月 野分のあした 昔は台風を「野分」と呼んだことは以前にも触れました。『源氏物語』の巻にも「野分」があり、『枕草子』には「野分のわきのまたの日こそ いみじうあはれにをかしけれ」と... 2024/08/30