キリスト教の宗派による違い、花を贈るときのマナーが知りたい
キリスト教での葬儀のしきたりは宗派によって異なり、花を贈る際のマナーも、宗派ごとに違いがあります。今回は、代表的な宗派ごとのポイントと、花を贈る際の注意点をまとめました。
この記事を書いた人
Hanaimo店主 鈴木 咲子
目次
- カトリックの場合
- プロテスタントの場合
- 正教会の場合
- キリスト教とユリの花
- 宗派がわからない場合
カトリックの場合
宗教の特徴:カトリックは、世界で最も多くの信者を持つキリスト教の宗派であり、ローマ教皇(法王)を中心とする教義や伝統を重んじます。聖母マリアや聖人に対する崇敬が重視され、彼らを模範とし、ミサにおいては信者が罪を悔い、司祭(神父)に告白する「ゆるしの秘跡」が重視されます。またカトリック教会は、ステンドグラスや絵画、彫刻など、豪華で荘厳な礼拝空間を取り入れることも特徴的です。
葬儀について:葬儀の形式はミサ(聖体拝領)が中心です。ミサでは「追悼の祈り」として死者のために祈りを捧げます。ご葬儀は教会で行われることが多く、埋葬後は四十九日ではなく「三日目」「七日目」「三十日目」など、特定の一日追悼の祈りを行います。
花の贈りかた:カトリックの場合、少し色味のある花(薄いピンクやクリーム色)を入れることもあります。カトリック教会の伝統や象徴性において重要な役割を果たした花(バラ・ひまわり・スミレなど)を入れるなど、花で神への忠誠や信仰を現す傾向があるのも特徴です。プロテスタントに比べると装飾的な要素がありますが、華美にならないように心掛けます。
プロテスタントの場合
宗教の特徴:プロテスタントは、信仰と教えの根拠を聖書のみとします。偶像崇拝を禁じ、聖人や聖母マリアへの祈りや像の崇拝を行いません。また、プロテスタントには多くの派閥(ルター派、改革派、バプテスト、メソジスト、ペンテコステ派など)があり、それぞれに教義や実践の違いがありますが、一方で個人と神との直接的な関係を重視し、聖書と信仰のみに基づいたシンプルで自由な信仰を強調するところが特徴です。
葬儀について:葬儀は「記念式」や「昇天式」とも呼ばれ、神様への感謝と故人をしのぶ式典が行われます。 特徴としては「昇天」を祝う意味が込められており、祈りを捧げることが中心となります。 –
花の贈りかた:プロテスタントは白をメインにした花が一般的です。信仰におけるシンプルさや内面の集中が重視されることから、全体的に過度な装飾は避ける傾向が強く、お花のデザインも控えめなものが適切です。
正教会の場合
宗教の特徴:正教会とは、キリスト教の教派のひとつで、ギリシャ正教、東方正教会とも呼ばれます。
葬儀について:正教会の葬儀は「奉神礼」と呼ばれる、独自の儀式が行われます。教会の伝統に基づく式次第があり、死者の安息を祈ります。
花の贈りかた:正教会でも白い花、とくに百合の花は聖母マリアの象徴として、使われることの多い花です。なお、花を贈る場合には、遺族や教会の意志に合わせることが大切です。あらかじめ確認することが難しい場合は、アレンジメントの色合いやデザインについては華美にならない程度の控えめな色、もしくは無難な白色を選ぶと良いでしょう。
キリスト教と白百合の花
キリスト教を象徴する花は多くありますが、中でも白百合(シラユリ)は、キリスト教の花の代表として扱われています。百合の花は、純潔、謙虚さ、優しい心、あるいは美のシンボルとされ、 古代ローマでは「希望」の象徴、キリスト教では聖母マリアの象徴です。
また、白百合はイエス・キリストの復活とも関係があります。キリスト教において、復活祭(イースター)には白百合がよく用いられるのは、キリストの復活と永遠の生命の象徴とされるからで、キリストの苦難と復活を意味します。キリスト教徒にとって、希望と信仰の象徴とされる所以です。
このような背景から、キリスト教では冠婚葬祭において、白百合は聖母やキリストの純潔をあらわし、また復活と永遠の生命を象徴する花として、多く使われるのです。
宗派がわからない場合
キリスト教徒に花を贈る際、宗派がわからない場合は、以下のような花を選ぶと良いでしょう。 これらの花は、キリスト教全般において一般的(ぶなん)であるだけでなく、献花でも使われるなど、礼儀を尽くした選択とされることが多い花です。
1.白百合
キリスト教全体で純潔や神聖さを象徴する花であり、特に葬儀や記念日、洗礼などに適当とされています。
2.カーネーション
白や淡い色のカーネーションは、思いやりや愛情の象徴であることから、特にふさわしい花とされます。友愛のシンボルとしても扱われますので、故人を偲ぶ気持ちを表現したいときにおすすめです。
3.キク
日本では一般的な弔花として知られる菊は、キリスト教でも使用されます。
4.百合(カラー)
色のついた百合の花は、宗派に関係なく贈ることはできますが、クリームや淡いピンクなど、華美な印象を与えない優しく淡い色がおすすめです。
5.バラ(白や薄い色)
白いバラは聖母マリアの純潔や、天国を象徴します。特に優しさ重視したいときには、適切な花とされます。
これらの花は、宗派に関係なく贈りやすい選択肢として広く使われておりますが、葬儀や祈念式に贈る際には、主催者やご家族の意向を確認してから、贈るようにしましょう。
この記事を書いた人
フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主 鈴木咲子
インテリア系専門学校に進学後、進路転向し花の世界に。ドイツ式フラワーデザインに出会い、ドイツ人マイスターフローリストに師事。2000年に渡独、アルザス地区の生花店でドイツ式フラワーデザインを習得。帰国後も、国内外で活躍するデザイナーのアシスタントとして経験を積み、2002年 通販サイトHanaimo開業。かたわらで大手生花店とのアドバイザリー契約、デザインプロジェクトへの参画など、コンサルタント、デザイナーとしても活動。
趣味は読書、文学に登場する植物を見つけること。高じて『花以想の記』を執筆中。2024年 5月号『群像』(講談社)に随筆掲載。一般社団法人日本礼儀作法マナー協会 講師資格。