7月
アジサイ 花言葉「辛抱つよい愛情」
「色彩と光の文学」と呼ばれる宮澤賢治の作品は、とかく「青」への思い入れが強いことで知られます。東北の空を象徴する青天、透明な水、満天の星空。彼の故郷である花巻の風土を通じ、生命の輝きのすばらしさを、賢治は読者に教えてくれます。
大正13(1924)年7月に残された、「薤露青(かいろせい)」という詩があります。薤露青とは、らっきょう(韮)の細い青葉についた、小さな露のこと。以下に詩の一部を抜粋します。
小さく青く透き通った滴に、はかなく短き人の運命を表したとも読み取れる美しい詩です。
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みをつくしの列をなつかしくうかべ 薤露青の聖らかな空明のなかを
たえずさびしく湧き鳴りながら よもすがら南十字へながれる水よ
岸のまっくろなくるみばやしのなかでは いま膨大なわかちがたい夜の呼吸から
銀の分子が析出される
みをつくしの影はうつくしく水にうつり プリオシンコーストに反射して崩れてくる波は
ときどきかすかな燐光をなげる。
『春と修羅』第二集 『薤露青(かいろせい)』より
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青いくるみと風の音を聴き、青い夕方をひとり歩き、桔梗色の空の中で星のまたたきに出会った賢治。イーハトーヴの青を目にうかべ、想いをはせるこの夏です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
水よわたくしの胸いっぱいの やり場所のないかなしさを
はるかなマヂェランの星雲へとゞけてくれ 『薤露青(かいろせい)』より