炎天の 地上花あり 百日紅

Posted on 2014/08/18
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残暑の中に咲く、百日紅がとてもきれいです。「百日紅」と書いて「さるすべり」。「ひゃくじつこう」とも呼びます。その名の通り、7月の初めから晩夏まで、百日にもわたって咲き続けると言われるほど、花期がながい夏を代表する花です。 ご近所でも、どこかにまだ咲いているかもしれませんね。
百日紅は夏の季語にもなっており、古くから多くの俳人に好んで詠まれた句が残されています。
百日紅 乙女の 一身 またたく間に  中村草田男
百日紅浮世は熱きものと知りぬ 夏目漱石
炎天の 地上花あり 百日紅 高浜虚子

また中国から伝わる伝説は、こちらも悲恋の物語。百日紅、と呼ばれる所以がここにあると言われています。花物語には悲恋が多いですが、この花もシカリ。またしてもセンチメンタルなのですが、せっかくなのでご紹介を。
古来中国では、竜神は水をつかさどる水神とされ、農耕生産との結び付きも強く、降雨や稲光をもたらす「雷神」と信じられていたり、竜巻のときに天にのぼる神とも考えられていたといいます。
昔、朝鮮半島にあった漁村では、生娘を竜神に生贄にして、夏の水難防止を願うという儀式がありました。旅の途中にいた一人の王子が、この漁村でその儀式に遭遇、人身御供にされかけた娘を救います。そして二人は激しい恋に落ちました。
しかし、旅の途中にいた王子は、自分に課された使命を終えるまでは暫しの別れと、娘に百日後の再会を約束して、旅発ちます。ところが、待ちわびた約束の日を目前にして、あろうことか娘は、王子との再会を待たずに亡くなってしまうのでした。
課された使命と、最優先に守るべきもの。王子が自身の選択を悔やみ、娘の墓前で嘆き悲しんでいると、やがて娘のお墓から、一本の木が生え、紅色と白色の可憐な花を咲かせました。
そしてその花が、百日もの間、美しく咲き続けたことから、この花を見た村人たちは、きっとこの花は百日もの間恋人を待ち続けた、あの娘の生まれ変わりに違いないといい、この花に「百日紅」と名づけたということです。
男にとって挿話な恋愛も、女にとっては生涯の歴史、そんな言葉とともに、堀辰雄の「風立ちぬ」を思い出しました。うだるような炎天の残暑に光る百日紅、切ない恋の化身かな^_^
あなたはいつか私にこう仰しゃったでしょう、―私達のいまの生活、ずっとあとになって思い出したらどんなに美しいだろうって…… 『風立ちぬ』 堀辰雄
サルスベリ 花言葉「あなたを信じる」