桜(さくら)
春に百花あり、といいますが、日本における花を観賞する文化は中国から教わったもの。ときは奈良時代に中国から伝来した梅が上流階級で流行り、そのような背景から『万葉集』(730年前後)には梅の歌が多く残されています。
万葉集にも桜の歌はありますが、数では梅の歌の方が圧倒的に多く、梅の歌が100首を超えるのに対し、桜は50首に届きません。
のちの平安時代になって都が京都に移ると、左近の梅が桜に植え替えられたのを機に、貴族たちは、京都近郊の各地で花見をするようになります。人々の間で桜に触れる機会が増えたことは、当時の桜の歌の数にも比例しており、その時代の歌を集めた『後拾遺和歌集』(1086年)においては、桜の歌集かと思われるほどです。
とはいえ、この頃までの桜を愛でる文化は上流階級のものでした。しかし江戸時代になると、戦がなくなったことも相まって、境内や周辺の美化のために植えられたり、武士から町民にわたるまでが園芸に興じたことから、多くの園芸品種が生み出され、いよいよ桜は庶民の花になります。
このように、日本の花文化は貴族にはじまり、山手の武士から下町の庶民まで、身分に関係なく一様に楽しめたことにより発展しました。世界でも類を見ない「花見」という文化も、花好きの先人たちが残してくれた、ありがたい歴史に紐づく風物詩です。
さあ東京の桜も見頃を迎えました。今年はどこで、どんな桜に出会えるかしら。楽しみですね。今日もいちりんあなたにどうぞ。
サクラ 花言葉「精神美」