盆の花
日本に暮らす私たちにとって、盆と正月はおおきな季節行事であり、昔から大変に忙しかったり、嬉しいことが重なったときには「盆と正月が一緒に来た」などといいました。
いま住む東京では、盆は七月に迎えますが、両親の故郷である北陸、また私が育った関東でも、盆といえば八月です。
盆は、それぞれの家に帰ってくる祖先、また先だった家族の霊を慰めるために精霊棚(盆棚)をつくり、故人の好きな食べ物や花を置いて、ともに食事をする魂祭とされています。
この棚に飾る花は「盆花」と呼び、昔は母親が台所仕事をしてるあいだに、子どもたちが山や野原から花を摘んできて精霊棚に飾ったものだと、本の中で見つけました。
この盆花ですが、手元の『日本植物方言集』(八坂書房)を開いたら、なんと30を超える「ぼんばな」がありました。
これら草花の名前を見るだけでも、昔の盆の時期には、さぞいろんな花が咲いていたのだろうと、その原風景が瞼の奥に広がり、思慕の情にかられます。
八月に迎えるお盆は、終戦記念日でもあり、故に昔の人にとっては、なお大切な行事であったことでしょう。古い時代には、帰る家のない無縁仏のために、村の辻にちいさな盆棚をつくる風習もあったといいます。霊が通る道は「盆路」といい、霊が迷わず家まで帰ってこれるようにと、草を刈り道を作ったのだそうです。
お盆とは、本来こうした農耕民族ならではの、日本人ならではの心の優しさと、魂を受け継いできた行事なのです。
そうと知り、いま私たちに、出来る心づかいはあるかしらと、どのように盆を迎えようかしらと、思いを馳せるこのごろです。
今日もいちりんあなたにどうぞ。
オカトラノオ 花言葉「慈愛」
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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
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