1月
あえる通信 2024春 短歌-2(330文字)
春風の花を散らすと見る夢は覚めても胸のさわぐなりけり
西行法師
「春風が花を散らすその刹那の夢には、目が覚めても胸の騒ぎがおさまらない」
これは家集『山家集』にある歌で、鳥羽天皇の皇后であった待賢門院を恋慕う西行が、夢で叶った待賢門院との逢瀬を、詠んだものとされています。皇后とは17才の年の差がありましたが、西行はそんな年上の彼女に恋こがれ、しかし叶わぬ恋と知ると23歳で出家し、彼女が亡くなるまで慕い続けたそうです。
「願はくは花の下にて春死なむ」と歌ったように、人生の終末は咲き誇る桜の花を見ながら死にたい、と願った西行。そんな西行にとって、これほどまでに桜が思い出深いものとなった背景には、若かりし頃に体験した悲恋の物語があったのですね。